根管充填ってなに?
こんにちは、井関です。
今回はかなりマニアックではあるのですが、根管充填材の話をしたいと思います。
根管治療がなされて、痛みや歯ぐきの腫れがなくなって、
もう問題が無いなとなったら、最後に「薬をつめますね」と言って何かを詰めるのですが、 一体何を詰めていると思いますか?
は?薬を詰めると言ってるんだから、薬じゃないの?
と、思われるでしょう。
通常、根管治療において詰める薬と言ってるものは、正確には薬ではありません。
ガッタパーチャと言われる熱帯の木から産生される樹脂を詰めているのです。
ガッタパーチャは1845年に海底ケーブルに使われたり、ゴルフが好きな方はご存知かもしれませんが、ゴルフボールに使われて、ゴルフボールが安価になりゴルフが広まったとも言われています。
歯科では、1847年に使われ始めたという歴史があり、1887年に製造を開始し始ました。
現在、成分はこのようになっています。
ガッタパーチャは20%くらいしか使われてないんですね。
大部分を占めるのは酸化亜鉛というものなのですが、通称ガッタパーチャと呼ばれています。
こんな風にピンク色をしています。
もう少しオレンジっぽい色をしているものもあります。
そして棒状というか針状の形態をしていて、これを根管の太さに合わせて何本も根管の中に詰めていくのです。
先ほども言いましたように、ガッタパーチャは1847年に歯科で使われ始めたので、今年でなんと!177年!
非常に歴史があるものなのです。
なので、たいていはガッタパーチャを詰めれば治るのですが、どうしてもガッタパーチャを詰めるだけでは治らないというケースもあります。
少し前までは、そこで抜歯となったわけですが、ここでMTAセメントの登場により治せないケースが治るようになりました。
MTAセメントはガッタパーチャと違い、殺菌作用、硬組織誘導能等という薬効があります。それ故に治るのです。
現在、MTAセメントはたくさんありますが、
当オフィスで使用しているのはこの3つです。
Pro root MTAセメントは世界で最初に作られたMTAセメントで、他のMTAセメントはこのPro root MTAセメントの後発材料です。
そして最近はバイオセラミックと呼ばれる材料が出てきました。
当オフィス用いてるバイオセラミックでは「Well-pulp」「Bio-C-sealer」がこれにあたります。
稀ではありますが、
「そちらではバイオセラミックを使ってますか?」という問い合わせがあります。
「使ってますよ、MTAセメントという物を」というと、
「いや、MTAセメントではなくてバイオセラミックを使ってますか?」と言うのです。
で、このブログを読んだ方には覚えていただきたいのですが、
Pro root MTAセメントの後発材料で特に米国のBrasselar社が販売している製品をバイオセラミックと呼ぶことが多い為、Pro root MTAセメントとバイオセラミックは違うものと勘違いされやすいのです。
正確にはバイオセラミックの中にPro root MTAセメントも含まれます。
では、バイオセラミックとは何なのでしょう?
簡単に言えば、生体に用いられる非金属無機材料です。
「人間は金属や合成高分子材料で構成されていない為、これらの材料が体内に入ると瘢痕組織を形成し、拒絶反応を起こします。 でも骨は拒絶反応を起こしません。
骨はカルシウム水和物、リン酸成分及びハイドロキシアパタイトが含まれます。
したがって、生体に入れる材料がハイドロキシアパタイトの層を体内で形成することができれば拒絶反応を起こさずに済む」
という仮説を立てて、1960年代後半から研究が始まりました。
そして現在、バイオセラミックは歯科だけではなく、医科の様々な分野で使用されています。 むしろ、医科の世界の方がはるかに進んでいます。
例えば、人工骨、人工関節、人工臓器などに使われています。
また、ガン治療用材料としても使われています。
医学は日進月歩です。
何年かしたら、全く違う材料が出てきてそれを使っているかもしれません。
しかし、現在において、いまだ論文数、エビデンスレベルでPro root MTAセメントを超えるバイオセラミック材料はありません。なので当オフィスでは治療にPro root MTA セメントを中心に用いますが、最近は症例によってはPro root MTAセメントより治療成績が良い他の2つのバイオセラミックも用いております。
当オフィスでは、根管治療だけでなく、全ての治療においてエビデンスレベルで正しいと思われる最新の治療を歯科医師、衛生士も含めて当院を訪れて下さっている方々に提供できるよう日々研鑽しております。