MTAセメントってなに?|井関デンタルオフィス|市川市の歯科・歯医者・根管治療

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MTAセメントってなに?|井関デンタルオフィス|市川市の歯科・歯医者・根管治療

MTAセメントってなに?

こんにちは、井関です。

今回はMTAセメントについて説明したいと思います。

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従来の根管充填材としては、ガッタパーチャと呼ばれる熱帯の木から生産される天然ゴム(樹脂)製の物が使用されてきました。

ガッタパーチャは根管充填材として1849年から使われています。

ということは、170年以上の歴史がある材料であり、現在でも最も頻繁に使用されている根管充填材です。

しかし、根管内における穿孔(穴)や、根先端部の破壊等が見られるケースではガッタパーチャでは治療が難しく、そこから感染して周囲の骨の吸収や歯茎の腫れ・痛みを引き起こしてしまうことから、抜歯を余儀なくされることも多々ありました。

封鎖性に優れたMTAセメントであれば前述のようなケースでも細菌の侵入を防ぐことができるので、抜歯を回避できる可能性が非常に高まります。当オフィスでもアメリカで開発されたMTAセメントを用いることにより、これまで多くの歯を救ってまいりました。

MTAセメントとガッタパーチャポイントの成分比較

MTAセメント

ガッタパーチャポイント

  • ポルトランドセメント 75
    (酸化カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、石膏、その他)
  • 酸化ビスマス(造影剤) 5
  • 精製水 20
  • ガッタパーチャ 1820
  • 酸化亜鉛 61%~75
  • ワックス、レジン 14
  • 重金属硫酸塩 217

MTAセメントの利点

封鎖性に優れている

封鎖性に優れていることがガッタパーチャポイントとの大きな違いとなります。
ガッタパーチャポイントの場合、それ自体では歯質に接着することは出来ず、シーラーと呼ばれる接着剤を用いる必要がありますが、MTAセメントはそれだけで歯質接着性があるため、歯に対して機械的、化学的に接着することが出来ます。

また、MTAセメントの固まる際に1.0%ほど膨張する性質によって、より隙間なくしっかりと埋めることができます。「ガッタパーチャポイント+シーラー(接着剤)」と比較すると、MTAセメントは格段に封鎖性に優れているため、細菌の侵入を防ぐことができます。

硬組織誘導能

MTAセメントを用いることで、吸収されてしまった骨と歯を再生することができます。
MTA
セメントは持続的に水酸化カルシウムを徐放(じょほう:成分が徐々に放出)します。これにより歯だけでなく、根の外の吸収された顎の骨の再生も促します。ガッタパーチャポイントにはこのような能力はありません。

優れた殺菌性(強アルカリ)

多くの細菌は酸性には強いものの、アルカリ性には弱く、口の中の細菌はPH9.5で死滅すると言われています。MTAセメントの練和直後はPH10.0程度ですが、3時間後にはPH12.5と強アルカリ性を示すようになり、高い殺菌性を発揮します。

根管充填剤を使用する際には根管内を出来る限り無菌化にしますが、口の中で完全な無菌というのはほぼ不可能で、細菌がわずかに残ってしまいます。しかし、わずかに残った細菌もMTAセメントの優れた殺菌性によって死滅します。
ガッタパーチャポイントには殺菌性はありません。

硬化すると固い

ガッタパーチャポイントは樹脂なのでかなり柔らかい材料ですが、MTAセメントは固まるとかなりの強度を持ちます。

硬化後24時間 40MPa
硬化後21日後 67MPa

67MPaというのは、歯に詰める金属のアマルガムより若干柔らかいくらいです。
強化型酸化亜鉛セメント(IRMセメント等)と同等の硬さになり、歯根破折を防止します。また、MTAセメントを根管内に充填した上に、グラスファイバーを用いたレジンによる支台築造(歯に建てる土台)を行うと、さらなる封鎖性の向上と、耐歯根破折が期待できます。

親水性

MTAセメントは親水性であり、根管内に多少の水分(出血、浸出液も含む)が残っていても使用が可能です。実際、根管内で完全乾燥は不可能に近いため、完全乾燥しないで使用できるというのは臨床上非常に重要なことです。「ガッタパーチャポイント+シーラー(接着剤)」での根管充填は教科書的には、完全な乾燥が出来なければしてはいけないことになっていますが、先に述べたように根管内の完全乾燥は不可能に近く現実的ではありません。

生体親和性が良い

細胞がこの上で培養出来るくらいの材料です。つまり体に優しい材料ということです

レントゲン不透過性

MTAセメントはガッタパーチャポイント同様にレントゲンに写ります。MTAセメントを充填した後にレントゲンを確認することで、正しく処置が行なわれたかどうかを評価することができます。

MTAセメントの歴史

1993 アメリカ、ロマリンダ大学、Mahmoud Torabinejadが発明。
1998
以降、諸外国では様々な臨床応用が認められています。

AAE(アメリカ歯内療法学会)によると、

A Cement-like material used as a root-end filling material,for perforation repair and pulp capping,and as a root-end barrier in teeth with an open apex.

(根尖に詰める、歯根内部の穿孔、歯髄覆とう(直接覆髄)、歯根未完成歯の根尖に用いられるセメントのような材料)

と説明されています。

先進国ではガッタパーチャポイントより優れた根管充填剤としてMTAセメントが積極的に用いられていますが、日本は諸外国より遅れをとっており、20074月に「直接覆髄材料」としてのみ薬事承認されただけに留まっています。

私は2011年よりMTAセメントを使用しておりますが、一番の感想はとにかく治る!です。

MTAセメントを用いる以前は、「これは治らないな、抜歯もやむを得ない」と思って治療をしてきた症例もたくさんありましたが、MTAセメントを使用してからは、「よほどのことがない限り治るな」と思う様になりました。これにより、抜歯になるケースは極端に減りました。

本当にすごい材料だと思っておりますし、これを開発したTorabinejad先生はノーベル賞を授与されても良いのではと思うくらいです。

Torabinejadにより一番最初に開発された物がPro root MTAセメント」ですが、

このパテントが切れたため、最近は多くのMTAセメントやバイオセラミック製材が出てきました。

(バイオセラミック製材について詳しくは以前のブログをお読みください)

しかし、未だエビデンスレベルで確立しているのは現状Pro root MTAセメント」のみになっています。

ですので、当オフィスもメインで使用しているのはPro root MTAセメント」ですが、欠点もあります。

それは、大抵の場合歯を黒ずませてしまうのです。なので前歯に使うと審美的に悪影響が出てしまうことがあります。

後発のバイオセラミック製材はPro root MTAセメント」の欠点を補うことができたり、操作性が良かったりするので、症例によってはバイオセラミック製材を用いております。

医学は日進月歩です、これからどんどん新しい製品や材料が出てくると思いますが、常に世界基準の情報を集め安全性、エビデンスレベルの高いものを提供していきたいと思っております。