歯内療法・根管治療
歯内療法・根管治療
まず知っていただきたいのは、日本では国民健康保険というものがあり、通常皆様、この保険を使われます。しかしながら、根管治療においては国民健康保険での治療ですと、成功率は45%と言われています。決して高いとは言えないこの成功率の原因はなんでしょうか?
おそらく歯科の治療でもっとも細かい治療であるということ。根の中という何も見えない中で、直径1ミリ以下の神経の管を指の感覚だけで探し当て、治療をしていきます。ものすごく難しい治療です。
世界的に認められていてどんなに素晴らしい器具機材でも、厚労省の許可が降りていないものは国民健康保険では使うことが出来ません。
①でも申し上げたように、根管治療は非常に細かい治療で難しいのですが、何故か、保険点数が異常に低いのです。よって、良い材料を使ったり、たくさんの時間を使うのが難しいのです。
成功率45%なので、当然やり直しの治療が多くなります。しかし、根管治療はやり直しの回数が多いほど成功率は下がります。それでは、精密根管治療とはなんでしょうか?
どんな治療もそうですが、的確な診査診断が一番大切になります。どこの医院でもそうだと思いますが、レントゲンを撮りますよね?しかし、一口にレントゲンと言っても同じではなく、レントゲンの種類によって画質、鮮明度、見え方は様々です。画質の悪いレントゲンでは、細かな診断は決して出来ません。
見え方がかなり違うのがわかると思います。左のレントゲンは歯の輪郭がしっかりと見えますが、右のレントゲンはぼやっとした感じで歯の輪郭が見えづらいのがわかるかと思います。右のレントゲンでは正確な診断はかなり難しくなります。
当院では、現在最高画質と言われているレントゲンを使用しております。難点はレントゲンは2次元的に見られますが3次元的に見ることはできません。そしてどんなレントゲンでも写らないところは写らないのです(特に奥歯)。
しかし、歯科用CTは3次元的に見ることができます。CTは骨の中、歯の中を見ることができ、しかも回転させて見ることもできるので360度様々な方向から診査ができます。例えば、レントゲンでは特に問題なさそうな歯でも、CTを撮ると根の先の骨が溶けている(黒くなっている)ことがわかります。(赤矢印の先)
レントゲン
CT
また通常は一つの根には神経の管(根管)は一つですが、下の画像のように、根管が2つあることもよくあります。特にこれをMB2と言い、これの見落としが非常に多くあります。根管を見落としてしまうと3〜4倍成功率が低くなると報告もあります。CTを撮ることにより、根管の見落としはかなり防げます。
根管治療で最も大切なことは、根管内の細菌を徹底的に取り除くこと、そして根管内に新たに細菌を入れないことです。お口の中には唾液があります、唾液の中にはたくさんの細菌がいます。 根管治療中に唾液が入れば細菌を入れることになります、これでは治しているのか悪くしているのかわかりません。なので、当院では必ずラバーダム防湿をし無菌的処置を図ります。またラバーダム防湿するメリットとして、根管消毒で使う薬液が流れ出たり、根管治療で使う道具を誤ってお口の中に落としたりしても安全です。ちなみにラバーダム防湿は1864年にアメリカニューヨーク州のBarnumという先生が発明したもので、決して最新の治療法ではありません。今から160年前というと日本では江戸時代ですよ!そんな頃に発明されたのです、すごいですよね。
根管治療は、歯の中の管(根管)をファイルという細い針を使ってきれいにしていくのですが、根管の中は暗く細く、直径はわずか0,数ミリの太さしかありません、なので裸眼では全く中を見ることはできません、それを指の感覚だけで治療をします。なので昔、根管治療が上手い先生というのは、経験があって指先の感覚の鋭い人でした。しかし、現在はマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いることにより、根管内を見ることができます。マイクロスコープは最大裸眼の20倍まで拡大して見ることができます。それにより根の先端までも実際に見て治療ができます。指の感覚だけで手探りで治療するよりも、見て治療するほうがより精度が高いことは当然です。
マイクロスコープは現在普及率10%程度と言われています。しかし、マイクロスコープがあれば誰でも精度が高い治療ができるわけではありません。治療はミラーに映した像を見ながら行われます、つまり鏡に映った逆の映像を見ながらしないといけないので、ミラー上で右に器具を動かしたい時は、実際は左に動かさないといけないわけです。これを習得するには最低200時間の練習が必要になると言われていて、3カ月から半年毎日練習しないとできるようにはなりません、出来なくて途中で挫折する歯医者もたくさんいます。
根管内の細菌を限りなく少なくし、根管内をきれいにしたら、最終的な薬を詰めます。これを根管充填と言います。従来の根管充填で用いられた材料は、ガッタパーチャポイントという樹脂です。私たちは便宜上お薬を詰めますねと言いますが、実際は樹脂を詰めています。ガッタパーチャポイントも歴史は古く100年以上前から世界中で使われていました。しかし、ガッタパーチャポイントでは様々な理由により、治せないケースが多々あります。そのようなケースにMTAセメント、バイオセラミック製材はものすごい成果を上げることが出来ます。
通常のファイルとは違い、しなりがよく根管の追従性が大変に良いので、曲がった根管でもきれいに削ることができます。また切削効率が高いので、治療時間の短縮になります。
通常、ファイルは一度使った後、洗浄し滅菌器で滅菌をし、再度使用します。しかし、ミクロの世界で言うとファイルにカスがついていることもあります。そういったことを防ぐために毎回必ず新品のファイルを使用します。衛生的に良いのはもちろんですが、新品は切れ味が良いので、治療スピードが上がります。また、何度も使いますと、ファイルが折れる危険性が増します。もし、根管内でファイルが折れると取るのは非常に難しくなり、治療の成功率が下がる可能性があります。